2016年7月9日土曜日

古事記伝


『古事記伝』(こじきでん、ふることふみのつたえ)は、江戸時代の国学者・本居宣長の『古事記』全編にわたる全44巻の註釈書である。『記伝』と略される。

医学の修行のために上洛していた宣長は、1756年(宝暦6年)、27歳の時に店頭で『先代旧事本紀』とともに『古事記』の巻を購入した。この頃、宣長は『日本書紀』を読んでおり、賀茂真淵の論考に出会って日本の古道を学び始める。宣長が本格的に『古事記』研究に進むことを決意したのは、1763年(宝暦13年)の、私淑する真淵と「松坂の一夜」ではじめて直接教えを受けた頃である。その翌年、1764年(宝暦14年)から『古事記伝』を起筆し、間に『玉勝間』や『うひ山ぶみ』などの執筆も挟んで1798年(寛政10年)まで35年かけて成立した。


宣長の『古事記伝』は、近世における古事記研究の頂点をなし、近代的な意味での実証主義的かつ文献学的な研究として評価されている。国語学上の定説となっている上代特殊仮名遣も、宣長によって発見されたと評価されている。宣長は『古事記』の註釈をする中で古代人の生き方や考え方の中に連綿と流れる一貫した精神性、即ち『道』(古道)の存在に気付き、この『道』を指し示すことにより日本の神代を尊ぶ国学として確立させた。